在留外国人と日本人の住み分けが地域社会に与える影響 ―市区町村ごとの非類似性指数を用いた実証分析―

近藤 かのん
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.225-236.

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要約

日本では、日本人と在留外国人の住み分けが起こっている地域がある。アメリカでは、人種間・民族間の分離によって犯罪発生率が高まるという実証的な知見が示されている一方日本では、住み分けと治安の関係性を明らかにしようとした研究は少ない。そこで本稿では、平成27年度に行われた国勢調査小地域集計を用いて、在留外国人と日本人の住み分けの度合いを市区町村ごとに算出し、その住み分けが地域社会の犯罪発生率にどのような影響を及ぼしているかを検証した。分析結果からは、第一に、アメリカの研究の知見に反して、住み分けが大きい地域では刑法犯発生率が低下すること、第二に、住み分けが大きな地域では自治体の在留外国人政策が進んでいることが分かった。この結果は、自治体の在留外国人政策が地域のエスニックコミュニティの存在に依存している可能性を示唆し、エスニックコミュニティに属さない在留外国人の包摂施策を充実させる必要性を明らかにするものである。