中央地方関係が難民認定率に与える影響 ―財政分離度・分権度の観点から―

倉持 涼音
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.179-193.

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要約

本稿は、中央政府と地方政府の関係性に着目し、先進国が難民受け入れを進める要因を考察する。近年では、難民受け入れにおける地方自治体の重要性が指摘されつつあるものの、既存研究は、受け入れ国の経済的・政治的要因に着目したものが大半であり、中央地方関係に着目したものはほとんど見られない。そこで本稿は、「分離・融合」、「分権・集権」、「分散・集中」の三つの側面から中央地方関係を捉え、それぞれを財政融合度、連邦制分権度、分散度という数値指標に表した上で、2015年から2019年までのデータに対して、プーリングモデルによる分析を行った。その結果、融合的、地方分権的な中央地方関係を持つ国ほど難民認定率が高くなることが明らかとなった。これらの結果は、中央政府と地方政府の連携を強めること、また中央政府から地方政府へ多くの財政移転を行うことが国の難民受け入れを促進させることを示唆しており、難民受け入れにおける地方政府の役割の重要性を改めて提起する形となった。