IUU漁業問題に対する国際協定の影響 ―IUU漁業指数に基づく実証分析―

浅井 真悠
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.77-94.

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要約

IUU漁業は、違法・無報告・無規制に行なわれている漁業であり、過剰な漁獲により海洋資源の状態に悪影響を及ぼしている。IUU漁業規制の法的枠組みは、海洋問題を包括的に規律する国連海洋法条約を基に整備されてきた。先行研究では、国際協定がIUU漁業に与える影響について定量的に分析したものは少ない。そこで、本稿では、2021年の「IUU漁業指数」のデータを用いて、国際協定の締約状況がIUU漁業の発生や各国の対応にどのような影響を及ぼしているのかについて検討した。分析結果から、旗国または寄港国の対応を規定する協定に締約している国ほど、IUU漁業の対応度が高くなること、また、同じ地域内で監視抑制を行う地域レベルでの規制の方が、対策義務が守られやすく、IUU漁業の発生度が低くなることがわかった。さらに、IUU漁業対策に積極的で、旗国と寄港国においてRFMOの規制義務を遵守している国ほど、IUU漁業が抑制される傾向があった。この結果から、旗国・寄港国の措置を規定した国際協定の締約国を増加させ、また魚種と地域を絞った実効的な機関であるRFMOに加盟し、義務を遵守することが、IUU漁業問題の解決を促すと考えられる。