6次産業化事業が地域農業に与える影響―都道府県パネルデータに基づく実証分析―
小林 未來
『築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5巻(2024): pp.97-108.
要約
6次産業化は、衰退を続ける日本の農業に対して所得安定化や経営の安定化を目指して取り組まれてきた。その経済的効果は、政府による調査や、それに基づいた既存研究において様々論じられてきたが、事業継続の困難さや実際の成果の不明瞭さなどの疑問も残る。そのうえ、統計データを用いた全国的な実証研究はほとんどなく、6次産業化の実際の効果は定かでなかった。そこで、本稿は、「6次産業化総合調査」のデータに基づいて、2011年から2022年までの都道府県パネルデータを構築したうえで、6次産業化事業が実際に農業・経済関連の変数にどのような影響をもたらすかを検証した。分析結果からは、農家一戸当たりの農業生産関連事業の年間販売売上が多い地域ほど、農家一戸当たりの生産農業所得が高まることが明らかになった。6次産業化事業の規模の拡大が、農業事業体の所得向上に寄与している可能性があり、今後の農業振興政策においても、6次産業化の導入を支援していくことが重要であると考えられる。