女性候補者の存在は女性有権者の投票参加を促すか―政令指定都市パネルデータに基づく実証分析―

戸谷 はるか
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第4(2023): pp.63-73.

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要約

本稿では、地方議会選挙における女性の候補者の割合と、その議員が出馬した選挙区における女性有権者の投票率の関連について考察する。先行研究に基づくと、日本ではそもそも女性議員・候補者と女性の投票率の関連を統計分析した事例が少なく、女性政治家の効果に関する検証が乏しい。海外においても、研究対象国によって分析結果が異なり、一貫性に欠ける。本稿では、日本の政令指定都市における統一地方選挙の過去5回分のデータを用いたパネルデータを構築した上で、選挙区レベルでの女性候補者と女性投票率の関連を検証した。分析結果からは、女性の候補者と有権者全体の投票率に正の相関が見られた。しかし、女性候補者・女性議員割合が、女性の投票率のみを高めるという統計的に有意な結果は見られなかった。地方議会選挙における女性の出馬は、男女問わず有権者の政治的な関心を高め、全体としての投票参加を促す可能性を示唆する。このことは、国民の政治的関心を向上させるという観点から、女性の立候補の促進に大きな政策的意義を認めるものと考えられる。