官僚人事制度の閉鎖性が電子政府の発展に与える影響

中村
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第4(2023): pp.1-17.

論文ファイルへアクセス (PDF)

要約

世界的なデジタル化の流れの中で、行政機関も電子政府の発展を期待されている。日本の電子政府発展の阻害要因として、公務員試験制度や長期雇用慣行がIT人材の内部化を妨げているという指摘があるが、既存の実証研究では、行政機関内部におけるIT人材の質や量に注目したものに留まり、人材の調達プロセスである官僚人事制度の閉鎖性との関連を見たものは未だ存在しない。そこで本稿は、「QoG Expert Survey」と「UN E-Government Survey」の国際データを用いて、官僚人事制度の閉鎖性が電子政府の発展に与える影響を検証した。その結果、途上国のような腐敗の深刻な国において、試験による入庁が電子政府を発展させるのに対し、先進国のような腐敗の程度の低い国においては、むしろ試験による入庁が電子政府の発展を阻害することが明らかになった。日本では、現状の公務員試験を前提とした閉鎖的な官僚人事制度の見直しが、更なる電子政府の発展に重要であると考えられる。