君主制の国民統合の効果―マレーシア選挙君主制および連邦君主制からの証拠―

東野 碧斗
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5(2024): pp.17-30.

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要約

世界の国々の5分の1が君主制を奉じているにもかかわらず、君主制は時代遅れの政治制度と見なされることが多い。しかし、多民族・多宗教社会において、君主の存在は社会上の軋轢を軽減し、国民統合を促進しているという見方もある。その研究の重要性に対して、国民統合の効果について定量的に分析した先行研究は少なく、君主制の効果とその理論的説明については明らかでなかった。本稿では、マレーシアの連邦君主制・選挙君主制という独自の制度に着目し、君主の選出が国民に与える影響を検証した。世界価値観調査の結果を用いたマルチレベル分析からは、君主の選出によって他民族への排外意識が減少し、マレーシア国民であるという意識が向上することが示された。マレーシアのような多民族・多宗教社会においても、君主制には国民統合に資する効果があると考えられる。