認定こども園が女性就業に与える影響 ―都道府県・政令市別パネルデータに基づく実証分析―

小門 結花
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.13-23.

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要約

本稿では、女性の育児と仕事の両立の可能性について、認定こども園が女性の育児と仕事の両立に与える影響について検証した。先行研究では、保育所の拡充が女性の就業率に与える影響が議論されてきたが、認定こども園の影響を検討した研究は少なく、認定こども園独自の特徴やその意義については実証的に明らかになっていない。そこで、本稿では認定こども園の定員率や類型ごとの施設数に注目して、認定こども園制度の開始以前の2002年から2017年までの4期間のパネルデータを作成し、認定こども園の量的拡充が待機児童率、女性の離職率、女性の新規就業率に与える影響について固定効果モデルを用いて検証した。分析結果からは、幼保連携型や幼稚園型の認定こども園の拡充が、待機児童率や女性の離職率を引き下げることが明らかになった一方で、保育所型についてはそのような効果がないことが示された。また、認定こども園の整備状況と女性の新規就業率との間には関連がない。認定こども園は、幼保連携型や幼稚園型など、新たな保育供給を増加させる施設の場合に、女性就業に正の効果があるという点が制度の運用を考える上で重要であろう。