左派政党の伸長が候補者クオータ制の導入に与える影響 ―離散時間ロジットモデルによる実証分析―

永井 帆南美
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.153-165.

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要約

女性議員を増やすための政策として、ここ数十年でクオータ制の導入が世界中で広がりを見せている。なかでも、近年、法律によって各政党に一定割合の女性候補者の擁立を義務付ける候補者クオータ制の普及が進んでいる。既存研究では、国際的な圧力や国内外の女性運動の相互作用が、候補者クオータ制の導入を推し進めることが明らかになっているが、このような国際的なトレンドに基づく説明は、国家間の差異を十分に説明できない。そこで、本稿では、1989年から2019年までの世界20か国のパネルデータを作成した上で、国家間の差異を説明する国内要因として、政策決定に直接的な影響を及ぼす政党システムに注目し、左派政党の伸長が候補者クオータ制の導入に与える影響を検証した。分析結果からは、議会内・閣僚内において左派政党の勢力が拡大するほど、候補者クオータ制を導入する可能性が高まることが明らかになった。政治分野における男女格差が深刻な日本においてクオータ制の導入を促進していくには、左派政党の伸長を促す制度設計が重要だと考えられる。