発展途上国における気候変動対策と経済成長はいかに両立可能か

小林
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.185-196.

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要約

本稿では、発展途上国において気候変動対策と経済成長の両立を図るために有効な政策について検証を行う。世界全体で気候変動対策を進める上で、発展途上国における気候変動対策と経済成長の両立が不可欠であるが、気候変動対策が発展途上国の経済に与える影響に関する検証は十分に行われていない。そこで、本稿は市場ベースの環境政策と非市場ベースの環境政策が経済に与える影響の違いに着目しつつ、198か国分の1990年から2021年のデータを用い独自にデータセットを作成した上で、パネルデータ分析を行った。その結果、市場ベースの政策が非市場ベースの政策に比べ雇用に与える負の効果が小さいことが判明した。また、労働者一人当たりの付加価値の増加が環境政策下においても GDP 成長率に正の効果をもたらすことも明らかとなった。こうした分析結果を踏まえると、発展途上国においても市場ベースの政策の有効性が高いこと、そして、労働者一人当たりの付加価値の増加等が気候変動対策と経済成長の両立を図る上での糸口となり得ることが判明した。