並立制下における再選戦略が議員行動に与える影響 ―復活当選制度と委員会活動とのつながり―

佐藤
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.141-152.

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要約

衆議院議員総選挙で用いられている小選挙区比例代表並立制は、小選挙区制と比例代表制の長所を組み合わせ、欠点を補い合う選挙制度であるが、小選挙区で落選した重複立候補者が比例区で復活当選するという仕組みには批判もある。復活当選は、議員の再選戦略をいかに規定し、議員行動にどのような影響を与えるだろうか。本稿は、選挙制度によって生み出される選挙競争と議員行動の関連を検証する。具体的には、混合的な選挙制度に着目し、小選挙区の当選者と比例区での復活当選者の間で委員会活動に相違が生じるのかを比較する。次回選挙での再選可能性が低い議員ほど、委員会での発言回数が増加するという仮説を立て、2014年と2017年の衆議院議員総選挙の結果と選挙後の委員会活動のデータを作成した上で、議員の個体効果を統制した固定効果モデルを推定した。分析結果からは、選挙競争の結果から再選可能性が低いと考えられる議員ほど、国土交通委員会など利益誘導に関わる委員会での発言回数を増加させる傾向にあることが示された。復活当選制度は、選挙区への利益誘導努力を促すという意味で賛否が分かれる制度といえる。