健康経営が企業成長に与える影響―健康経営度調査に基づく実証分析―

鈴木 優雨
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第4(2023): pp.187-198.

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要約

企業における従業員の健康管理を経営的視点で検討・実行する「健康経営」のアプローチは、欧米を中心とした様々な国で普及と推進が掲げられている。しかし、「健康経営」に関して実証的に検討する既存研究は諸外国において豊富である反面、国内における健康経営の効果に関しては明確になっていない。そのため、本稿では、2019年および2021年の日本企業2000社に対して行われた「健康経営度調査」のデータを用いた上で、企業の健康経営が財務指標から企業成長に与える影響を検証した。分析結果からは、健康経営の指標と財務指標に関して顕著な関係性は確認できなかったものの、健康診断・ストレスチェックに代表される個人の健康課題の把握と管理職への健康経営に関する教育支援の充実は、少なからず企業成長の促進に寄与する傾向が明らかになった。従業員に対するこまめな健康状態の把握と並行して、健康経営の理解を深める教育や学習企画の拡充を行うことが重要と言える。