サブスクリプション型運賃制度が公共交通に与える影響 ―全国パーソントリップ調査に基づく実証分析―

遠藤 秀一朗
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第3(2022): pp.211-223.

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要約

サブスクリプション型運賃制度は、自動車依存社会から抜け出すことを目的に国土交通省が推進している「日本版MaaS」の取り組みの一つであり、制度導入に向けた法整備が徐々に進められている。既存研究では、サブスクリプション型運賃を始めとする公共交通機関への定期券の導入が人々の移動に影響を与えることが示されているが、パーソントリップ調査などを用いて人々の移動目的や移動手段への影響を実証的に検証した研究はほとんど見られない。そこで、本稿は、1999年から2015年の間に実施された全4回の「全国都市交通特性調査」から自治体別のパネルデータを構築したうえで、鉄道・バスのサブスクリプション型運賃の導入によって、人々の移動目的や交通手段の利用状況にどのような影響がもたらされるのかを検証した。分析結果からは、鉄道やバスのサブスクリプション型運賃制度の導入は、外出機会の創出や、自動車依存からの脱却をもたらす効果を有することが示唆された。さらに、サブスクリプション型運賃制度の副次的効果として、徒歩での移動機会が増加することとともに、自転車での移動機会が増加したことから、シェアサイクルなど、自転車利用と公共交通機関との連携を図る施策が有効であると考えられる。