政府の透明性が財政健全化に与える影響―都道府県データによる実証分析―
山本 柚寿
『築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5巻(2024): pp.153-164.
要約
本稿は、政府の透明性が地方財政健全化に与える影響を実証的に分析したものである。日本の地方財政は、少子高齢化や人口減少による税収減少・福祉費の増大といった課題に直面しており、財政の持続可能性が問われている。このような状況下、近年、地方自治体において財政の透明性を向上させる制度改革が進んでいる。政府の透明性は、政策決定や財政支出内容の公開を通じて説明責任を強化し、効率的な財政運営を促進する重要な手段とされる。しかし、日本では近年の地方財政透明化の効果を体系的に検証した研究は少ない。本稿では、全国市民オンブズマン連絡会議が実施した2010年から2020年までの都道府県別の透明性データを用い、政府の透明性が地方財政に与える影響について実証的に検証を行った。その結果、透明性スコアが高い自治体ほど実質公債費比率が低くなる傾向が明確に見られ、予算編成過程における透明性の向上が公債費の管理および抑制において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。一方で、市民参加度は必ずしも歳出を抑制するものではなかった。これらの実証結果は、予算編成過程の透明性向上策や市民参加の形態の見直しが、地方財政の持続可能性を高める上で重要であると示唆するものである。