外国人との接触機会は排外意識を減少させるか―世界価値観調査のマルチレベル分析―

佐藤 佑和
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第4(2023): pp.257-271.

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要約

外国人に対する差別意識、すなわち排外意識に関する研究は、グローバル化に伴う外国人との交流機会の増加により近年ますます重要性を増している。接触仮説や集合脅威理論などの排外意識に影響しうる仮説については、海外・国内双方において盛んに研究が行われている。しかし特に日本国内を対象とした研究では、外国人との接触機会を細分化した上でそのような接触の効果における個人属性ごとの異質性を検証したものはない。そこで本稿は、先行研究の蓄積も多く、排外意識に正の影響を与える変数として有力な市民の年齢を用いて、年齢が接触仮説または集合脅威理論の効果に影響を及ぼすメカニズムを検証した。世界価値観調査2019の日本の結果を利用した分析結果からは、集合脅威理論の効果が支持され、また年齢が若いほどその効果が大きいことが明らかになった。本稿の結果は、外国人労働者の受け入れを進める際には、特に若年者の集合脅威認識を低減させるような方策が必要であることを示唆する。