公教育が学生の英語力に与える影響―「英語教育実施状況調査」に基づく実証分析―
佐藤 馨音
『築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5巻(2024): pp.133-152.
要約
グローバル化が進む現在、日本においても英語教育の充実による学生の英語力の向上は目下の課題となっている。しかしながら、既存研究はアンケート調査に基づくものが多く、行政単位のデータを用いた英語教育の効果検証は少ないという課題が残る。そこで、本稿は2019年から2023年までの「英語教育実施状況調査」の結果から、都道府県別のパネルデータを構築し、中学校と高等学校の各英語教育施策が学生の英語力にどのような効果をもたらすか検証した。分析結果からは、教員の英語力や、授業内での英語の発話機会、学習到達目標の設定・公表・到達状況の把握が学生の英語力の向上に有意に正の影響をもたらす一方で、ALT人材やICT機器の活用は有意な効果が得られないことが示された。以上の結果から、英語教育においては、技術的な施策よりも、教員の英語力の向上を目指した研修制度の整備や、学生が実際に英語を使って学ぶ環境づくりを徹底しつつ、それらを具体的な学習到達目標の管理下において実施することが重要であると示唆される。