投票参加における近隣効果の実証研究―所得格差と高齢化の観点から―

松永 徹生
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.55-66.

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要約

本稿では、地域レベルの要因が個人の投票行動にどのような影響を与えるかについて近隣効果の観点から考察する。近隣効果は社会学において多くの研究がなされているが、投票行動に関連付けてなされているものはいまだに少ない。本稿では、国勢調査と東京大学谷口研究室・朝日新聞共同世論調査を組み合わせて、地域データと個人データを結合させることで近隣効果の検討を行った。その結果、個人的な高齢化は投票参加に正に相関するのに対して、高齢化が進んでいる地域では、投票率が低下するという逆説的な現象が発生していることが示された。投票行動については、従来の研究で用いられるような個人的なモデルのみで検討するのではなく、地域的な近隣効果を考慮した上で検討していく必要があると言える。