エリアマネジメントが地域環境に与える影響―イベントスタディ分析に基づく実証分析―

日高 千広
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5(2024): pp.195-210.

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要約

日本の各都市は、中心市街地の賑わいの喪失や遊休不動産の増加など、様々な地域課題を抱えており、これらを解決し、エリアの価値を向上させる取り組みが一層求められている。そこで近年、エリアマネジメントと呼ばれる、地域の価値を維持・向上させるための民間による主体的な取り組みが注目を集めている。先行研究では、エリアマネジメント活動が商業地の地価に正の影響を与えることが明らかになっているが、エリアマネジメント活動が地価を上昇させるメカニズムを客観的指標の変化から捉えた研究は少ない。本稿は、官民一体型のエリアマネジメント活動である「リノベーションまちづくり」の先進事例として知られる和歌山市を対象に、エリアマネジメント活動が地価や人口、経済等の様々な変数に与える影響を、イベントスタディ分析を用いて検証した。分析結果からは、エリアマネジメント対象範囲の地価が上昇していること、またそれに対応して、同対象地区の20~39歳人口が有意に増加していることが明らかになった。「リノベーションまちづくり」における遊休不動産を子供向け教育施設や子育て世帯向け住宅に利活用する取り組みが、子育て世代である20~30代の居住移転を促し、間接的に地価の上昇をもたらしていると考えられる。