ふるさと納税制度は地方税収格差是正に貢献しているか

朝来野 颯翔
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第4(2023): pp.35-50.

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要約

ふるさと納税制度は、自治体間の税収格差の是正や地方創生を目的に設立された制度であるが、返礼品にばかり納税者の注目が集まっている現状から、その有効性に対して否定的な声が多く挙がっている。しかし、実際のふるさと納税受入額の規定要因や格差是正への影響に対する実証的な研究は乏しく、包括的かつ定量的なふるさと納税の流出入メカニズムは明らかとなっていなかった。そこで、本稿は令和2年度及び3年度のふるさと納税に関する現況調査を活用し、ふるさと納税制度による地方税収格差是正に対する効果を検証した。分析結果からは、ふるさと納税制度は、財政力の高い地域から低い地域、都市部から地方部への再分配の性質を持つ一方で、地域資源の偏在が税源再分配の偏りに寄与していることと、前年度同条件で成功していた自治体ほど、より広報費用や返礼率を高める努力を行っており、さらに格差を拡大させる可能性を有する制度であることが明らかになった。したがって、制度趣旨の一つである自治体間の健全な競争を促進する、という点において、受け入れに成功している自治体の先進的な取り組みを共有するための情報公開基準を設けるなど、制度設計に改善の余地があると考えられる。