東京都区部における緑地面積が大気汚染に与える影響

八巻 璃咲
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5(2024): pp.121-132.

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要約

緑地の増加は、国内外の研究から大気汚染物質の減少に有効であると考えられている。しかし、既存研究では、地域単位のデータを用いて緑地の増加が大気汚染に与える影響を実証的に検討したものが少ない上に、網羅的な大気汚染物質への影響は明らかにされておらず疑問も残る。そこで、本稿は、日本の東京都区部を事例として、長期的・網羅的な観点から、緑地と大気汚染物質の関連を明らかにすることを試みる。具体的には、1986年から2021年までの区部別・大気汚染物質別のパネルデータを構築した上で、緑地が大気汚染物質に与える影響を検証した。分析結果からは、緑地の増加が温室効果ガスであるCH4、及び光化学スモッグの原因となるOXを生成する成分となるTHCを減少させることが明らかになった。緑地の増加が特定の大気汚染物質の抑制において政策的な重要性を有すると考えられる。