働き方改革が障害者雇用に与える影響―「CSR企業総覧」に基づく実証分析―

外谷 あかね
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第5(2024): pp.251-264.

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要約

本稿では、働き方改革が障害者雇用に与える影響について、混合研究法を用いて考察する。欧米の既存研究では、働き方の柔軟化が障害者の雇用機会の創出に影響を与えているという実証研究がある。他方、日本では、働き方の柔軟化との関連については記述的な言及に留まり、障害者雇用の促進・阻害要因に関する実証研究はほとんど存在しない。そこで本稿では、「CSR企業総覧」に基づき、2012年から2021年まで3年ごとの企業別パネルデータを独自に作成し、働き方改革の外生変動を利用して、働き方の柔軟化が障害者雇用に与える影響を検証した。その結果、勤務時間の柔軟化の指標である有給休暇取得率と短時間勤務制度は、障害者雇用にポジティブな影響を与えることが認められた。一方で、勤務場所の柔軟化の指標である在宅勤務制度と障害者雇用率には有意な関係が認められなかった。加えて、日本企業の事例を基に質的分析を実施した結果、勤務時間の柔軟化を促進することによって、障害者の健康に配慮した働き方が可能になり、障害者の雇用機会につながることが明らかになった。したがって、日本で障害者雇用を促進させるためには、フレックスタイム制度や短時間勤務制度といった勤務時間の柔軟化を支援する制度の拡充が重要だと考えられる。