「働き方改革」政策の効果分析―日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)の個票データを用いた実証分析―

飯淵 尚哉
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.151-172.

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要約

「働き方改革」を通じて企業が導入した制度によって、働く人の幸福度や仕事満足度は増大したのだろうか。これまでの研究では、ワークライフバランスに関する個別の制度が幸福感・主観的満足度の変化に与える影響に注目したものが多いが、パネルデータを用いて個人の特性を統制しながら、そのような制度を包括的に分析した研究はまだ少ない。本稿では、「日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)」を用いて、幸福度と仕事満足度を従属変数として、働き方改革の中心的な対象だった五つの施策の効果を検証した。その結果、長時間労働が過半数の労働者の幸福度を損なっていて、長時間労働の是正によって幸福度が増大することが示された。さらに、異動の社内公募制度や転職しやすい環境づくりなど、希望する分野に集中して働ける制度を導入することで、より仕事満足度や幸福度が向上することが示唆された。