日本企業の組織再編が収益性に与える影響―企業パネルデータに基づく実証分析―

清水 俊英
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.173-184.

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要約

本稿では、M&A・ジョイントベンチャーの設立・事業売却などの企業の組織再編が収益性に与える影響について検証を行う。先行研究では、買収対象企業の同業種/異業種及び国内/外を分類した際にいずれに属する企業を買収すると収益性が改善する傾向にあるかは明確になっていない。そのため、本稿では、2000 年から 2020 年の計 60 社の日系大手企業が実施した組織再編施策を計量化し、収益性に与える影響をパネルデータ分析した。分析結果からは特に、多角化施策としてはジョイントベンチャーの設立が相対的に収益性の向上につながる可能性が見られること、及び不採算部門の売却を進めることで収益性が改善する傾向が見られることが明らかとなった。一方、M&A に関しては、買収対象の国内外・同業種異業種を問わず M&A の実施が収益性の改善に繋がりやすい顕著なケースを特定することはできなかった。