コンパクトシティが財政効率性に与える影響―人口規模別の最適DID人口比率の推定―

島尾 桐太
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.197-214.

論文ファイルへアクセス (PDF)

要約

本稿では、人口減少地域の財政の持続可能性を高めるための方策の 1 つとして、コンパクトシティ政策の財政支出削減効果の推定を行う。市町村財政の最小効率を実現する最適人口規模に関する研究は存在するが、コンパクトシティ政策の観点から人口集中地区の人口割合に着目し、自治体の財政に与える影響に関して検証した論文はほとんど見られない。本稿では、コンパクトシティ化の指標として人口集中地区人口割合(DID 人口比率)を用いた上で、市町村の人口規模別標本ごとに、DID 人口比率が住民 1 人あたり歳出総額に与える影響についてプーリングデータを用いた重回帰分析を行った。その結果、DID 人口比率の増加が財政支出を削減する可能性を示唆した一方、人口規模に応じて混雑現象が発生し、その効果が逓減することが分かった。また、人口 3 万人未満の自治体では DID 人口比率の有効性が低く、更なる市町村合併の必要性が示唆される結果となった。