日本における生涯未婚率の上昇要因とその性差―都道府県別パネルデータ分析に基づく検証―

勝尾 優大
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.139-150.

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要約

本稿では、日本における男女の生涯未婚率の上昇要因について考察する。従来の研究では、一時点の横断面データを用いた分析を行っているものが多く、日本全体での生涯未婚率上昇というマクロ要因を排除出来ていない。また、男女の性差について論じている文献はほとんど存在しない。本稿では、2005・2010・2015 年の 47 都道府県のデータを収集して、パネルデータ分析を行うことで、時間的・地域的な異質性を除き、男女別生涯未婚率の要因を分析することを試みた。分析結果からは、男性は完全失業率が高まるほど生涯未婚率が高くなるのに対し、女性は完全失業率が高まるほど生涯未婚率が低くなるという性差が明らかになった。この結果は、女性は失業状態になると、職業選択として結婚を行う誘因が高まることを示唆している。日本ではいまだ男女が共に就業と家庭生活の両方を担う意識が定着しておらず、男性は仕事、女性は家庭という性別役割分業意識が根強いものと考えられる。この意識が現在でも強く結婚時に影響を与えているため、女性が就業と結婚・育児とを両立できる環境整備を構築する必要があると言える。