出生順位に起因する教育投資額格差の動態とその規定要因―現行多子世帯支援策の妥当性の間接的検討―

鈴木
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.87-104.

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要約

本稿では兄弟姉妹間における出生順位に起因する教育投資額格差の動態とその規定要因について考察する。兄弟姉妹間における教育達成格差に注目した研究は一定数存在するが、教育投資額格差という家庭内資源配分の実態については多くが明らかとなっていない。そこで本稿は、世帯パネル調査を用いて同一世帯における同年齢時の教育投資額格差を直接的に検討するモデルを構築し、兄弟姉妹数の影響を構造的に除去した上で、その具体的な動態と規定要因について検討した。分析の結果、我が国における教育投資額格差においても出生順位効果は存在し、その効果は同年齢時で比較して年齢の上昇とともに第一子有利で拡大していくこと、そうした動態における格差の大きさは世帯要因によって変化すること、投資が集中しやすい特定時点において一時的に格差が緩和される傾向にあることが示された。これらの結果は現行支援策が必ずしも十分に機能していないことを示すとともに、我が国における支援制度をより格差実態に即した構造へと積極的に転換させる必要性を示唆する。