民主主義の平和における市民文化と武力紛争の関連―世界価値観調査に基づく実証研究―

田井 響己
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.19-30.

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要約

本稿では、国際関係論において最も重要かつ実証的な知見の一つであるデモクラティック・ピース理論(Democratic Peace Theory; DP論)に対する市民文化の影響について考察する。DP理論の妥当性は膨大な文献で明らかにされているが、民主主義国の市民の政策選好や価値観との関連を分析した研究は少ないのが現状である。本稿では各国の国民の価値観を調査した世界価値観調査(World Values Survey; WVS)のすべての波のデータを用いて、DP理論における市民文化と国家間紛争の関係を検討した。その結果、民主主義国家においては、国民の市民文化が対外政策の決定に影響し、紛争過程の抑止力として働くことが示された。民主主義が紛争抑止につながるメカニズム、またはその条件として、市民文化の重要性に注目する必要がある。