待機児童数に対する保育施設整備の効果と保育施設選択要因について

山田 優奈
築山宏樹研究会三田祭論文集』 第2(2021): pp.121-138.

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要約

本稿では、待機児童数に保育所整備が与える影響について、認可・認可外といった保育施設の種別の違いや、潜在的待機児童などの待機児童の定義上の問題に注目して検証する。これまでの研究で、保育施設定員増加が待機児童減少に効果を持つことが示されているが、保育施設の運営基準の相違に注目した研究は多くない。そこで、本稿は、潜在的待機児童の存在に留意した上で、認可・認可外の種別ごとの保育所整備状況が待機児童数に与える影響を検討する。東京都市区町村別の単年度データを用いて、保育施設利用割合変化率が待機児童割合変化率にどのような効果を持つかを検証した。分析の結果、認可保育施設だけでなく、認可外保育施設の利用者の増加も、待機児童数減少に貢献していることが明らかになった。このように認可外保育施設の整備拡充は待機児童対策として有効であると考えられるものの、一般に認可外保育施設の利用を忌避する保護者も少なくない。そこで、認可外保育施設への補助や改善点に繋げるため、アンケート調査を利用した保育施設選択要因についての分析を行った。認可保育施設を重視する保護者は、保育施設を選択する際に機能的要因に加えて、施設の設備や職員体制という質的要因を重視する傾向が見られた。